目の下のクマトリ手術(経結膜脱脂術)に併用することの多いのが、脂肪注入です。
脂肪注入の利点の1つは、半永久的に効果が持続することです。
注入した場所で脂肪細胞が生きた組織として活動します。
効果が半永久的というのは、ヒアルロン酸やFGF、スネコスなどのコラーゲンブースターと比較して、脂肪注入にしかない大きなメリットです。
そのために、当院では脂肪をメインの注入材料にしています。
脂肪注入はその長所の反面、独自の問題もあります。
それは「生着率」です。
生着してしまえば、脂肪は周りの組織となじみがよく、効果が永続します。
しかし生着しないと、いくら注入しても意味がありません。
むしろ死んだ脂肪は石灰化したり固くなることがあり、ボコツキの原因になります。
そのために「いかにして脂肪の生着率を上げるか」が、執刀医として一つの使命になるわけです。
そこで今回は脂肪が生着するための条件についてお話します。
脂肪に限らず、すべての細胞は、生きていくために栄養が必要です。
栄養というのは、栄養素はもちろん酸素も含まれます。
栄養は血管で細胞のすぐそばまで運ばれてきます。
そこから組織液を介して細胞に取り込まれます。
細胞が出す老廃物も、組織液と血管を通じて回収されていきます。
脂肪注入では、細胞だけを引越しさせますので、注入した脂肪細胞の塊の中には血管がない状態です。
注入した脂肪細胞は、引越し先にもともとあった血管からの栄養だけで生き延びることになります。
そのため血管のすぐ近くに注入された脂肪細胞は生き残り、血管から遠い脂肪細胞は死んでしまいます。
この生死のプロセスは手術後1日以内に開始されます。
ちなみに生き残った脂肪組織の間にはゆっくりと新しい血管が形成されてきて、長い目でみると普通の脂肪組織と同じくしっかりとした血管を持つようになります。
実際の脂肪注入の脂肪を塊として注入した場合、塊の表面の脂肪細胞は血管が近く栄養が届いて生き残ります。
しかし、脂肪の塊の中央の脂肪細胞は血管が遠いため栄養が届かず死んでしまいます。
この比率が生着率になります。
このことから、脂肪の生着率をあげる方法は次のようになります。
・脂肪をまとめて大きな塊として注入せずに、少量ずつ分散して注入する。
・そうすれば、もともとある血管から栄養が届く脂肪細胞が増えて生き残る割合が高くなる。
やはり丁寧な手術・施術が大事ということですね。
医学的な根拠にもとづいて、お一人ずつしっかりと治療させていただきます。
MIKIクリニック豊中駅前
院長 池田幹則