くま取り手術では、経結膜脱脂術でも脂肪注入でも、手術後の内出血が強くでるとアオタンになったり、腫れが強くなったりと目立ってしまいます。
この内出血は、目の下のホホに出るので仕事や日常生活で支障を感じる方も多くおられます。
私の経験でも、目の下のクマの診察に来られる方のほとんどが、内出血を含めたダウンタイムをかなり気にされます。
やはり目の下のふくらみを気にされるのが、いわゆる美容マニアではない、ごく一般的な方が多いことも影響していると思います。
できるだけ内出血を軽減できるようにと日頃から考えて、手術では全力を尽くしていますし、最近では手術後のアイシング用の氷嚢をお渡ししたりしています。
それに加えて当院では、内出血を少しでも減らせればと、手術時のトラネキサム酸の注射をオプションとして行っています。
このオプションを開始したきっかけは、手術後の内出血を減らす良い方法はないかと世界中の論文を検索していた時に、次の研究結果を見つけたことです。
2022年のThe New England Journal of Medicineに掲載された論文です。
The New England Journal of Medicineは200年の歴史がある、権威の高い医学ジャーナルです。
インパクトファクターという、ジャーナルのすごさを表す数字が100前後あるお化けジャーナルです。
ちなみに私の博士論文が掲載されたジャーナルのインパクトファクターは2ぐらいです・・。
この論文では1万人!の手術患者(手術内容はさまざま)を2つのグループに分けて、一方のグループにだけ手術時にトラネキサム酸を静脈注射し、手術後30日間の出血をチェックしています。
そうしたところトラネキサム酸注射グループで手術後の出血イベントが少なかったという結果でした。
この結果をもって、トラネキサム酸注射がクマ手術後の内出血をどれほど低下させるかは正直わかりません。
ただ、その可能性は十分にあるのではないかと考え、当院ではオプションとして希望される方に行っています。
あと、この論文ではトラネキサム酸注射の副作用も研究されています。
その結論として、副作用はほぼ何もありませんでした。
トラネキサム酸は出血を抑制する作用のある薬ですので、逆に血栓ができるのではないかという懸念があるのですが、それがなかったということです。
それもあり当院でも安心して使用しています。
他にも色々な論文をあたりましたが、これほどエビデンスのしっかりした論文を見つけることはできませんでした。
今後新しい有力な研究が発表されれば随時取り入れていきたいと思います。