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脂肪注入
自身の脂肪を採取し、目的の部位の皮下組織(脂肪層)に注入することで、ボリュームを増やすことができます。
脂肪注入自体は1893年にドイツではじめて報告されて以降、現在では100年以上の歴史があります。その後多くの研究が行われ、現在では安定した手術方法として確立されています。
クマ治療での脂肪注入の目的は2つです
①目の下を明るくする
目の下~ゴルゴライン(ホホの前方部分)に脂肪注入を行うことで、その部分のボリュームを増やし、皮膚を持ち上げます。
それにより目の下に光が当たるようになります。
光があたることで影クマが改善し、明るく健康的な目元になります。また色クマ(青クマ、茶クマ)や小じわもある程度軽減して見えます。
②シワを減らす
ボリュームが増えることで皮膚が張り、ある程度のシワの減少効果があります。
経結膜脱脂に伴うボリュームロスにより、シワは増える傾向がありますので、
脂肪注入によりこの増加をある程度抑制することが可能です。
ただし、涙袋の直下など、経結膜脱脂によってどうしてもシワが深くなるところがあります。
極端にシワを減らしたい場合は、皮膚を切除する手術方法(表ハムラ法:当院では扱っていません)をおすすめします。
経結膜脱脂術+脂肪注入
42.8万円~
リスク:腫れ、内出血、ふくらみの再発、ぼこつきなど
脂肪注入のメリット(ヒアルロン酸注入と比較)
・生着すれば半永久的にボリュームアップ効果が持続する
⇔ヒアルロン酸は1年ほどでなくなる
・自分の組織なのでなじみがいい
⇔ヒアルロン酸は青白く透けて見えることがある(チンダル現象)
当院ではこの2点のメリットが非常に大きいと考え、手術(経結膜脱脂術)をする方への注入には、脂肪をおすすめしています。
(外科医として、せっかく手術をするのに手術後も定期的に治療(ヒアルロン酸の注入)が必要ですというのは抵抗があります。)
そもそも手術を避けたい方にはヒアルロン酸をおすすめしています。
そのいっぽうで、脂肪注入にもデメリットがあります。
それは、生着率が悪いと吸収されてなくなってしまうことです。
そのため、当院では生着率を上げるために脂肪の処理にこだわった2種類の脂肪注入を行っています。
当院の脂肪注入
マイクロファット+ナノファット(シルキーファット)
マイクロファットは、遠心分ののち脂肪の塊を専用のフィルターを通すことで、小さな粒に細断する技術です。
細かい粒にすることで、脂肪細胞が周囲からの栄養を受けやすくなり、注入後の生着率が高まり、ぼこつきのリスクも低下させることができます。
脂肪が細かくなるので、細い針(通常の針と比較し断面積が約60%減)の使用が可能で、より繊細に注入を行うことができます。
ナノファットは、マイクロファットよりも脂肪をさらに細かくします。
ここまで脂肪が細かくなるとゲル状になってきます。
このため皮膚のごく浅いところや、皮膚が非常に薄い部位(涙袋直下など)にも安全に注入することが可能で、シワ・ちりめんジワ、青クマの改善効果に優れています。
通常はマイクロファット、ナノファットを作るために、金属の筒を使用します。狭いトンネルの中を脂肪を通すことで細かくします。
この方法のメリットは金属の筒は再利用可能なのでコストがかからないことです。
デメリットは狭いトンネルを通すために脂肪に強い圧力がかかり脂肪細胞の生存率が低下することです。
当院ではこれらの脂肪の細断にアディナイザーと呼ばれる専用フィルターを使用しています。
アディナイザーはフィルター内に鋭利な刃がついており、脂肪を鋭的に細かくすることができます。これにより脂肪の生着率を高めることができます。
このようにアディナイザーによって生着率を高めた脂肪は単にマイクロファットやナノファットではなく、シルキーファットと呼ばれます。
アディナイザーは完全ディズポなのでコストはかかりますが、安全性も高くなります。
手術の実際
・脂肪採取
大腿内側の皮膚を5mm程度切開します。
脂肪採取専用の先の丸い注射針で脂肪を吸い集めます。
採取できる脂肪の量が足りなければ、他の部位から採取することもあります。
・脂肪処理
遠心分離とマイクロファット、ナノファットの処理を行います。
・脂肪注入
針で皮膚に小さな穴をあけて、そこから先の丸い注射針を挿入して脂肪を注入していきます。
このとき、注入する層を分けること、また少量ずつ注入することが重要です。これによって注入した脂肪に栄養が行き届き、生着率が上がります。
脂肪の生着には、遠心分離、マイクロファット、ナノファットといった脂肪の処理も重要ですが、執刀医の注入技術が最も影響を与えます。
標準的なダウンタイム
・痛み
脂肪を注入する目の下の痛みは軽度で、押さえると痛い程度です。
脂肪採取部(大腿)の方が、痛みがあります。
それでも軽度の筋肉痛程度のことが多いです。皮膚表面のピリピリ感がでることもあります。
いずれも1週間前後で改善します。
・腫れ
手術直後は注入した脂肪の分だけ腫れている程度です。
手術1,2日後が最も腫れます。そのため目が少し細くなります。
ホホを持ち上げられているような感覚もあります。
その後徐々に改善し、1、2週程度で収まります。
・内出血
目の下
3人に1人程度は青色の内出血(いわゆるアオタン)が出ます。
他の方は黄色の内出血がうっすらと出る程度であまり目立ちません。
30人に1人程度は下まぶたにも内出血が出ます。
2週間程度でほとんどの方の内出血は消失します。
脂肪採取部(大腿)
しっかりとした内出血が出ることが多いです。
重力に従って膝ぐらいまで広がることもあります。
こちらは消失までに2~3週間程度かかります。
まれですが、アトピー性皮膚炎など皮膚に炎症を起こしやすい体質の方は、内出血の後に一時的な色素沈着がでることがあります。
合併症
・感染
ほとんどありません。
発生する可能性を減らすために、手術時の抗生剤投与、清潔操作を徹底しています。
ただ、注入した脂肪には当初血流が乏しいので、感染することはありえます。
その場合には、抗生剤の投与などの治療を行います。
・注入した脂肪の硬化
注入した脂肪が壊死し液状になり、さらにそれが被膜で覆われると吸収されずに残ります。
その被膜に石灰化がおきると固く触れるようになります。
これはとくに脂肪を1か所に大量に注入した場合に起こりやすい合併症です。
これを回避するために脂肪の処理を行ったり、注入方法に工夫を行っていますので、当院ではまれな合併症です。
副作用・リスク
腫れ、内出血、感染、ぼこつきなど
費用
脂肪注入 29.8万円~
脂肪注入の当院のこだわり2つ
①デザイン
上方からの光がしっかりと当たり、自然で明るい目元になっていることを目指します。
オージーカーブ(横から見た時の目の下~ホホのライン)に代表される理想的なラインを考慮しつつ、年齢、骨格、他部位とのバランスを見ながら形を作っていきます。とくに不自然に膨らんだ目元にならないよう注意しています。
また表情による影響も考えて、目を開けて、目を閉じて、笑ったり、上を見ていただいたりして、手術中に細かく注入量を調整します。
②生着率
採取した脂肪の処理を含め、生着率を上げるために様々な工夫をしています。
これまでの多くの手術経験のほかに、世界中の最新の論文に目を通し、できる限りの方法で生着率を高める工夫を行っています。
生着率を高めることは、ぼこつきのリスクを低下させることにもつながります。
当院で行っている生着率に関係する具体的な工夫に次のようなものがあります。
・脂肪の処理(遠心分離、マイクロ化、ナノ化)
・脂肪を採取する注射針の太さの最適化
・脂肪採取圧の調整
・多層に分けての注入(骨上、中層、浅層)
・微量ずつの注入
・脂肪を注入する注射針の太さの最適化 など