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経結膜脱脂術の歴史

2024.03.09

先日患者さんに、経結膜脱脂術は安全なんですか?と質問をいただきました。

経結膜脱脂術はリスクの低い手術ですよとお答えしたのですが、詳しくお話を聞くと奥が深い質問内容でした。

 

正しくは、「経結膜脱脂術は昔からある手術方法ではないので、手術後に長い時間が経過したときにどうなるかわからないんですよね?」ということでした。

あるドクターがそう言っているのを聞いたので心配ですとのこと。

 

経結膜脱脂術は別に新しい手術方法でもないので、それも大丈夫ですとお答えしました。

この発言をしたドクターの意図は、美容医師によくある自分の治療を推奨するためのポジショントークだろうと思います。

 

今回は、医学的に正しい、経結膜脱脂術が具体的にどれほどの歴史のある手術かのお話をします。

 

論文として入手できる一番古い経結膜脱脂術の記録は、Tomlinson医師が1975年に報告したものです。

ですので経結膜脱脂術は、今から50年前には行われていた手術方法ということです。

これは手術方法としてかなり歴史が長いと言えます。

また掲載されていたジャーナルはPlastic and Reconstructive Surgeryで、ちゃんとしたところです。

内容は、経結膜脱脂術の詳しい手術方法の紹介と手術前後の症例写真です。

 

この論文で興味深いのが、実は経結膜脱脂術はもっと前から行われていたと記載があることです。

別の医師が1955年から行っていた経結膜脱脂術を教えてもらって、この論文を書いたとなっています。

そしてさらにこの別の医師は、また別の医師が1923年に経結膜脱脂術をしているのを知ってやっていたと言っているのです。

つまり経結膜脱脂術は100年前からある手術方法ということです。

 

手術方法は100年あれば十分すぎる歴史です。

長い歴史があり、その手術がずっと行われているということは、安全性や効果が高い治療だと言えます。

 

今回のように、美容医療は色々なドクターが医学的な根拠なく色々な情報を発信しています。

クマ治療に関しても、情報を集めすぎて何が正しいのかわからなくなりましたと患者さんから言われることも増えています。

 

エビデンスは?とか、最近の研究はどうなってる?など地道に医療をやってきた身としては、やはり美容医療は特殊な世界です。

最近は固いことを言っているようで、むしろ自分がおかしくて年寄りになってきたような感覚になってきました。

医師になって最初の15年、外科医として医学的根拠を重視するトレーニングを受けたので、習い性になってしまっていますね。

 

ちなみに、この100年前の経結膜脱脂術の記録はフランス語で書かれているようで、さらに入手もできなかったので詳細は不明でした。