先日目の下のクマでお悩みの患者さまから、脂肪注入で失明することはありますかと質問を受けました。
くま取りに脂肪注入を併用することが多いので、こういった質問はときどきいただきます。
いつも失明のリスクはありますが、その確率はかなり低いですと答えています。
ただ正確な確率というのは実はわかっていません。
正確な確率は次の式で求めます。
脂肪注入による失明の確率=失明数/脂肪注入数
しかし、世界中で行われている脂肪注入数も失明数も誰にもわからないので、確率の計算のしようがありません。
失明の確率がある程度高ければ(たとえば1件/1000人程度)、一人の医師、たとえば私だと年間に数百件の脂肪注入を行っていますので、
私が行う脂肪注入に限れば確率を出せそうです。
しかし実際には失明の確率がかなり低いので(おそらく1件/数万人?)、私の医師人生でも1回も発生しないことになります。少なくともその確率が非常に高くなります。
確率がかなり低いとはいっても、失明という重大なリスクはなんとしても避けたいので、当院ではさらに2つの点に注意しています。
①眉間と鼻へは脂肪注入を行わない
各種(脂肪、ヒアルロン酸)注入で失明しやすい危険部位のいうのがわかっていて、その2トップが眉間と鼻になります。
過去の報告ではこの2部位で失明のおおむね70~80%を占めます。
そこで当院では眉間と鼻には脂肪注入を扱わないようにしています。
②注入にはカニューラ針を使用する
注入に使用する針も、尖った普通の針よりも先の丸いカニューラ針を使用すると確率が下がる(数分の1程度)ことが分かっています。
そのため当院では全例でこのカニューラ針を使用するようにしています。
失明という重大なリスクを徹底的に回避するためには、確率が低いから大丈夫というだけではなく、やはり医学的な根拠に基づいた一工夫が必要だと思います。